独逸発! あや太郎新聞

欧州での9年に及ぶ様々な経験を得意の毒舌を生かし、斜め左から書き綴っていきたいと思います。そして私が小学生のころ、学級新聞として書いていた「あや太郎新聞」をここで復活させたいと思います。

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よく日本人でドイツに来たばかりの人に

「美容室はどうなさっていますか?」

と訊かれる。私が渡独した時も誰かに聞いた覚えがある。

色々試した結果、一番の方法として、私は今や髪を切る事の出来る友達に切ってもらっているが、それまでは様々に大変な目にあった。

方法として、一番確実なのは、デュッセルドルフやフランクフルトにある日本人経営の美容室の、日本人の美容師さんに切ってもらう事なのだが、学生の身分とあっては電車賃も含め、そんな贅沢はそうそう出来ない。

そこでつい冒険心を起こした私は、ドイツ人のやっている美容室に行ってしまったのだが、初めの一回は友達がよく行っている美容室で切ってもらったので、案外まともだった。

美容室としてもよく研究している今風の所で、若手の女性の店員さんが初めてアジア人の髪を切るというので、あまりの毛の太さと毛質の硬さにビビりながら切ってくれたのだが、びっくりするぐらい綺麗にまっすぐパッツリ切ってくれた。毛先をさわったら、あまりに完璧にまっすぐ切ってくれたので、まるで筆の先の様な感触だった。

見ていた店長が、あまりの私の直毛ぶりに興味津津で、

「良かったらツーピースにしてみない?」

などとものすごいパンクな髪型の例を見せてきた。

「いや、それは次回ね。」

と流石にその時は断った。

これで安心して私は別のドイツ人の美容室にも行ってしまったのだが、まず間違いだったのは、友達の紹介で行ったのだが、紹介した友達自身はその美容室に行った事が無かった事。

「よく日本人や韓国人が行っているらしい。」

という噂だったので、経験があるから大丈夫だろうと思って行ってしまった。

街の中心の大通りにある、アイス屋さんの2階にある美容室だったが、外からはわかりにくいから、その場所に美容室があるとはそれまで知らなかった。

入って行って、

「よく知り合いが来ていると聞いたので・・・」

と話すと、

「ああ、私はよく日本人や韓国人のお客様を切っているから、それは私の事だわ!」

と指名する間も無く、暇そうにしていたおばさんが寄ってきた。
前歯が抜けていて、ガタイも大きく、ちょっと逆らい難い感じのおばさんだった。

それでも経験が豊富なら大丈夫だろうとおばさんに切ってもらう事にして、しばらくすると、

「前髪も切るの?」

と訊かれたので、

「はい。」

というと、

「じゃあ、ちょっと下を向いてくれる?」

と言うので何の疑いも無く下を向いてしまった。
後で友達が「その時点で何故気付かなかった?!」と私を責めた。

ジョキジョキとおおざっぱに鋏が入った気配がし、

「さ、上を向いて!」

と言われて上を見た時、目の前の鏡に写った自分に固まった。

実にひどかった。

前髪はほぼ1センチもなく、それも真っ直ぐですらなく、何故か斜めにボサボサと切られている。
それなのにこのおばさんは、

「どう?」

といかにも自信満々だった。

「はあ・・・」

としか答えられなかった私はあの時、まだ渡独して何年目だったか。
今だったら絶対、あんなひどい状態に1ユーロも払いたくない。

そりゃあそうだ。下を向いた状態で前髪なんか切ったら、思ったより短くなってしまうのは当然で、プロの美容師でこんな事を言う人はおらんだろう。

それでも自信満々なのは一体どういう美的感覚をしているのか。
髪を切っている時に話した話題も、なんだか

「韓国人より日本人のお客さんの方がいいわ。ニンニク臭くないから!。」

と言った感じで、自分は清潔感のある訳でもないのに一体、どれだけ上から目線なのかとイラツとさせられたのだが、その時に感じた不快さは正確な第6感だったのだろう。

今更、何を言ってもここまで短い前髪がどうなる訳でもなく、さらに文句をつけてこれ以上、この全く根拠の無い自信に満ち溢れたおばさんにいじられても嫌なので、無言で美容室を出たが、そのまま知り合いの日本人の美容師さんにすぐに電話を入れた。

そもそも以前はこの日本人の美容師さんにプライベートで切っていただいていたのだが、別の街に引っ越したために、この時はその街の美容院を開拓するつもりでこのアイス屋の2階に来ていた。

だが、この非常事態では前の街に1時間かけてでも行って、その美容師さんにせめて手直ししていただくしかない。

運よく、その日の午後に時間が空いていたので、すぐにその方に手直ししていただく事になったが、私の頭を見るなり、

「ここまでひどいとは・・・。私、もし万が一、自分のお客さんをこんなにしてしまったら、なんとかするまでお客さんを外に出せないわ・・・。」

と言っていた。

「でも、こんな風に自分が切る事は流石に無いだろうけど。」

とも、補足していた。

彼女の最大限の努力で、どうにもならない1センチで斜めの前髪は、少しでもマシに整えられた。
でも1センチは1センチである。前髪がピヨピヨしていた。

また、こんな時に限って私は、大学のオーケストラの授業に載せられていた。

それも1番オーボエとしてオーケストラの真ん中に座り、音合わせのたびにコンサートマイスターのMちゃんにAを出していた訳で、毎回、目を合わせて合図をするために、Mちゃんはいつも私の顔をチェックしていた事もあり、もうあれから5年は経つのに、未だに

「あの時の髪型はすごかったね・・・・。」

と、言われる。

流石に何度も顔を合わせた時に覚えられてしまったのだ。
彼女以外だって、オーケストラの真ん中で音合わせの音を出していたんだから、かなりの皆さまの目前に出ていた訳である。勿論、そのままコンサートだってやった。

あれはシューベルトの未完成だったから、冒頭からクラリネットとのソリで衆目を集めがちな演目ですらあった。

それらを全部、前髪1センチのピヨピヨでこなしたもんだから、今や、自分の見かけはどうでもいいと言う所まで悟ってしまった。

ドイツ人の友達に「あんまりだー!!」と泣きついた時は、

「まあ、待てばいいのだ!伸びるまで!」

と言われたが、その期間は思っていたよりも何倍も長く感じられた。

そんな経験を積んだがために、それ以降、流石にドイツ人美容室は出来る限り避けた。
ほとんどトラウマに近かった。

ただ、それでも必要に駆られて2回くらい行った感じでは、11ユーロなどの格安美容室の方が、こういう怪しくも、値段は普通の美容室より事故が起こらない・・・ということだった。

これはつまり、格安美容室では、全体の長さを整えるくらいしかいじらないから、逆に事故が少ないのだ。ただし、ブローをしてくれないので、冬などはまだ渇ききらない髪のまま外に出されたりして寒かった。
中には自分でブローをする所もあったそうだ。

それで結局落ち着いた所は、髪を切る事が出来る友達に任せてしまう事だ。
友達だったら、夕飯をご馳走したりする代わりに切ってくれる訳で、出費も少く済むうえに、腕は少なくともあのドイツ人美容師よりはいい。
さらに前髪1センチなんて事になったら大変だとよくわかっているから、時間をかけて丁寧に仕上げてくれる。

日本に帰ってきて、日本の本当の美容師さん(ドイツのあれは偽モノ以外の何であろう。)に見せると、流石に素人(友達い)の手だから不思議がられるが、それでもドイツでは、私はこの友情にいつも満足させられている。

日本は美容師大国でもあった。皆さま、思えば相当優秀である。



補足
ちなみに、「男性は韓国人学生に頼んで切ってもらう」という手段が使える。
何故かと言うと、韓国人学生は、大概、2年もある兵役を済ましてから留学してきているので、兵役で髪を切る事を習っているのである。ただ、みなソルジャーカットになってしまうという欠点はある。



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